みなさんこんにちは、助産師たまです。
よく「完全母乳vs完全ミルク」なんて論争を見かけます。
道ゆく知らないおばさんに、母乳で育てないとかわいそう!って言われたり…
でも本当に母乳で育てないとかわいそうなのかな?
助産師目線で考えてみたいと思います。
まずは母乳とミルクのメリット、デメリットを見てみましょう。
母乳のメリット
栄養や免疫物質が多く含まれている
母乳は赤ちゃんが消化・吸収しやすいといわれています。
また出産直後から数日間で出る「初乳」には、細菌やウイルスを防いでくれる免疫グロブリンAやラクトフェリンが多く含まれます。
特に最初の6か月を母乳で育てられた赤ちゃんは、風邪や胃腸炎にかかりにくいといわれています。
赤ちゃんのあごの発達を助ける
母乳はしっかりと吸わないと出てこないので、あごを使うことであごの発達を促し、かむ力や歯並びにも良いとされています。
乳幼児突然死症候群のリスクを下げる
できるだけ母乳栄養をすることで、乳幼児突然死症候群のリスクを減らせることがわかっています。
手間がかからない
お母さんと赤ちゃんがいれば成立し、物の準備や消毒がいらないので手間がかかりません。
産後の体の回復に良い
授乳するとオキシトシンというホルモンが出ます。これは子宮を収縮させるホルモンでもあるので、産後胎盤が剥がれたところを自分の力で止血するために子宮が収縮する手助けになり子宮の回復を促します。
お母さんが病気にかかりにくくなる
乳がん、子宮体がん、卵巣がんにかかるリスクが下がります。また閉経後、骨粗しょう症のリスクも下げられることがわかっています。
お金がかからない
これから何かとお金がかかる子育て。。
お金がかからないのはメリットかもしれません。
母乳のデメリット
飲んでいる量がわからないので、不安になることがある
飲めているのに不安になることを「母乳不足感」といいます。どれくらい飲めているのか目に見えないので、お母さんが不安になってしまうことがあります。
長時間預けられない
お母さんのおっぱいも張って痛くなってしまったり、赤ちゃんが哺乳瓶を嫌がってしまい人に預けられないことがあります。
授乳の間隔が短く、頻繁に授乳する必要がある
メリットに書いたように母乳は消化吸収しやすいのため、赤ちゃんがすぐにお腹がすいてしまうことがあり頻繁に授乳する必要があります。
おっぱいがトラブルになる可能性がある
吸わせ方によっては乳首が切れてしまったり、乳腺炎になることもあります。
出が十分でない場合、赤ちゃんの体重が増えないことがある
母乳の出が赤ちゃんの体重や欲しがる量に追い付かない場合には、赤ちゃんの成長に影響がある場合があります。
ミルクのメリット
お母さんの負担が減る
誰でも作ってあげられるので、お母さんの負担が減ります。
特に産後は身体もボロボロ…そんな中で新生児の時期はまだ昼夜のリズムができておらず3時間おきにおなかがすくペースの赤ちゃんが多いので、夜中もミルクをあげなければいけません。
粉ミルクは誰でもあげられるのでお母さんが体を休めることができます。
小さめ赤ちゃん用の栄養がたくさん入ったミルクがある
早産や低体重で生まれた小さい赤ちゃんが効率よく栄養を取れるようにするために成分が調整されたミルクがあります。
腹持ちが良い
消化吸収に時間がかかる分、腹持ちが良いです。
飲んでいる量が目に見えるので安心できる
どれくらい飲んだかが一目でわかるので管理しやすいです。
吸う力が弱い赤ちゃんでもしっかり栄養がとれる
最近では低体重児用の哺乳瓶の乳首もたくさん種類があります。母乳は赤ちゃんが頑張って吸わないと出てこないのですが、赤ちゃんの体重や口の大きさによっては難しいことも。そんな時には低体重児用の哺乳瓶でしっかり飲んでもらい体重を増やしていきます。(ミルクでなく搾乳を飲ませる場合もあります。)
お母さんの食事やお薬に制限がいらない
お酒やカフェインなども、量を気にすることなく口にすることができます。
またお薬の影響を考える必要がありません。
ミルクのデメリット
物の準備や作るのがやや面倒
ミルクを溶いて人肌程度の温度にして…という準備が必要です。
また生後半年くらいまでは細菌に弱いので赤ちゃんが使う哺乳瓶や乳首を消毒する必要があります。
外出のときに荷物が増える
長時間のお出かけで赤ちゃんがおなかがすくことが予想されるとき、哺乳瓶や粉を持っていく必要があります。場所によってはお湯なども持参しなければなりません。旅行など泊りがけであれば、消毒物品も持ち歩く必要があります。
結論
完全母乳育児を絶対にしなければならないのか?
答えはNOだと私は思っています。
私個人の意見としては「お母さんが健やかに過ごすことが赤ちゃんの健康、健やかな成長につながるので、完全母乳だけにこだわる必要はない‼」です。
赤ちゃんの免疫、乳幼児突然死症候群のリスクを下げるなどのメリットも大いにありますし、WHO(世界保健機関)も母乳育児を推進しています。
母乳で育てることが苦痛なくできるのであれば、母乳育児をするに越したことはありません。
でも、なかなか母乳の出が追い付かないお母さんもいます。持病があって母乳があげられないお母さんもいます。乳首にキズなどができて泣きながら授乳しているお母さんもいます。(正しい授乳方法で授乳すれば、痛みなく授乳することができます。)
母乳で育てることがお母さんにとって多大なるストレスになっているのなら、母乳育児だけにこだわる必要はないと思うのです。
子供が20歳を迎えるまで、お母さんはあと20年育児していかなければならないのです。でもそのうち、おっぱいだけが栄養になるのははじめの1年程度。1歳になれば離乳食もだいぶ進みます。
最近のミルクは栄養面では母乳にかなり近い形になっています。ミルクでも、ちゃーんと大きくなれます。
それぞれに大変さがあり、共通するのは「どのお母さんも頑張って赤ちゃんを育てている」ということ。どっちがえらいとか、すごいとか、ないです。
だから、ミルクで育てようと思っている方、なかなか母乳が軌道に乗らずミルクで育てている方、出が良くなくて混合育児になった方が、肩身が狭い思いをする必要はないのです。
母乳の出を良くしたいな、と思われている方、よければこちらの記事も見てみてください♪
絶対母乳しかだめ!!!!みたいな極端な助産師も中にはいます。
メリットを考えると勧める気持ちは大変よくわかりますが、そのスタンスがつらくなったら、こんな助産師もいることを思い出してくださいね。
最後に余談をひとつ。
わが母、第一子のわたしを出産したときにはあふれて常に吐くほど母乳が出て私は完全母乳育ちです。
第二子の弟を出産したときには、感染症があって入院した弟に付き添ったりしているうちにストレスで母乳が出なくなり完全ミルクに。
その後、わたしは平均身長、弟も平均身長まで育ちました。
母乳育ちは頭がよくなるって聞いたことありませんか?
ミルクで育った弟の方が、国立大学の医学部を卒業し医師をしています。
いろいろな研究が進んで、母乳は脳の発達に良いとたしかにいわれていますが、体の大きさや勉強・運動などの得意・不得意は本人の個性も大いにあると私は思っています。
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